追跡IPO企業――ティーケーピー、貸会議室大手、人手不足、面接会場に需要、大塚家具株、業績のリスク(StartUp)

2018-07-11

7月11日の日経産業新聞に当社が掲載されました。

 貸会議室運営大手のティーケーピー(TKP)が2017年3月の東証マザーズ上場後に好調に業績を伸ばしている。18年2月期の売上高、営業利益は前の期比3割増と過去最高を更新した。人手不足を背景に企業が採用活動や社員研修を積極化していることが追い風だ。ただ足元では17年11月に出資した大塚家具の株価が低迷、業績のリスク要因に浮上している。

 「信用度が上がり様々な情報が入ってくる。人材も採用しやすくなった」。河野貴輝社長は上場の効果をこう話す。

 TKPは不動産オーナーから遊休資産を割安に仕入れて、企業向けに会議室や宴会場としてシェア(共有)する事業を手がける。場所を提供するだけでなく、映像・音響設備の貸し出しや食事の手配など付随サービスもセットで提供する。

 18年4月時点で国内で1,919室の会議室を運営。景気が悪いときは10~20年の長期契約で割安な価格で物件を借りて、企業に転貸することで利ざやを得る。景気が良いときは都心などの新築ビルを2年程度の短期で契約し、付随サービスを充実させ価値を付ける。

 18年2月期の連結売上高は31%増の286億円、営業利益は28%増の34億円と上場時に公表した予想(それぞれ268億円、32億円)を上回った。人材採用のための説明会や面接会場として、TKPの会議室を利用する企業が増えている。

営業部隊を増員

 上場後に営業体制を強化したことも奏功している。コールセンターへの問い合わせ状況をリアルタイムで監視するシステムを導入。本社の法人営業部隊は60人から100人に増員した。

 売上高の85%がリピーター顧客で、取引額上位2,500社で8割を稼ぐ。宴会場を持つホテルが競合になるが、企業や団体の不祥事に関連した記者会見など「ホテルでは対応しにくい需要も取り込んでいる」(河野社長)という。

 海外は5年前にニューヨークに出店。人件費の高さを理由に長らく赤字が続いてきたが、「今期は損益トントンが見込めそう」といい、3号店の開設も検討する。今期は国内外で266室の純増を計画。19年2月末に2,124室と前期末比14%増える見通しだ。

 河野社長が意識するのは共用オフィス大手の米ウィワーク。同社は未上場ながら企業価値が2兆円を超えるとされる。TKPの時価総額は約1,500億円だが、「企業が持つ施設を流動化させることでさらに成長できる」と自信を見せる。

取得の半値以下

 ただ、誤算もある。17年11月に資本・業務提携した大塚家具だ。約10億円を投じて株式の6%を取得。大塚家具の余剰となった店舗スペースにTKPが出店し、会議室やイベント会場として再生を図る狙いだった。

 大塚家具の店舗は平日の来場者が少ないが、TKPは法人の利用が中心で平日の稼働率が高い。会議室を利用してもらうついでに大塚家具への来店を促す「シャワー効果」を期待する。休憩スペースには大塚家具のソファを配置して顧客に試してもらう。東京・新宿や仙台市の店舗では、こうした協業を始めた。

 しかし大塚家具は業績不振が続いており、10日の株価は366円とTKPの取得価格(815円)と比べて5割以上下落している。このまま株価低迷が続けば、減損損失が発生し、今期の業績の押し下げ要因となる可能性がある。

 減損リスクは成長機会と表裏でもある。米アマゾン・ドット・コムに代表されるネット通販が拡大する中、実店舗を持つ企業は苦戦が続く。店舗が縮小しショールーム化する過程で生まれた空間をTKPが活用できれば、事業再生の新たなモデルになる。

 18年11月には札幌市の老舗百貨店「丸井今井札幌本店」の南館5~7階を借り受け、貸会議室として運営を始める。大塚家具も試金石となる事例だけに「何とか成功させたい」(河野社長)。協業を深化させ、成果につなげる具体的な取り組みが問われる。

《ティーケーピーの概要》 
▽ 主な事業  貸会議室、ホテル宴会場運営 
▽ 設立時期  2005年8月 
▽ 上場時期  2017年3月(東証マザーズ) 
▽ 初 値  10,560円(公開価格を74%上回る) 
▽ 上場後の主な取り組み  大塚家具との提携を機に空間再生事業を本格化 
▽ 時価総額  1,544億円(7月10日時点)